鮒ずしは有名ななれずしですが、滋賀県にはドジョウのなれずしもあります。なかなか普段目にする機会がないかもしれませんが、神事をとおして今に受け継がれています。
ドジョウのなれずしは、その名のとおりドジョウを発酵させます。もちろんちゃんと食べることができますし、鮒ずしとはまた違った独特の味がします。
三輪神社(栗東市)のドジョウ祭り

滋賀県栗東市にある三輪神社では350年以上続くドジョウ祭りが毎年行われ、神事でドジョウのなれずしが奉納されます。奉納の後、関係者だけでなく一般の方々も食する機会があります。
ドジョウ祭りの由来は、もともと神の使いの白蛇が人身御供を要求していたものが、時がたち人ではなく生きたドジョウをなれずしにして奉納したのが始まりだとか。生きたままのドジョウを漬けこんでいくのも特徴の一つです。
ドジョウのなれずしをつくる担当(家)は当番制で、まさに地域全体で支え、受け継いでいるお祭りとなっています。
ドジョウとナマズのなれずし

三輪神社のドジョウのなれずしは、ドジョウ、ごはん、蓼(たで)の葉、ナマズを漬けこみ発酵させていきます。毎年9月に漬けこみを始め、5月に口開け(漬けこんだ桶を開けること)を行います。



一番上にきれいに盛り付けられているのはナマズです。
このなんとも言えない灰色はなんだ、本当に食べられるのかと初めて見られる方は驚きを隠せないかもしれません。これは、一緒に漬け込んだ蓼(たで)の葉の色が緑色から変わっているのが大きく、全体的に灰色に見えています。
まさて、気になる味です。鮒ずしに比べて、酸味のあるさわやかな香りがしてフルーティで食べやすかったです。ドジョウやナマズは水分が抜けきっているような食感で、魚自体の味はあまり感じませんでした(筆者の感想)。
時代に合わせた伝統の継承
時代とともに生活様式や生活環境は変わりますので、伝統を守り次代に受け継ぐのはそう簡単なことではありません。三輪神社のドジョウ祭りも例外ではありません。
もともと漬けこむためのドジョウは三輪神社近くの地域の川でとっていましたが、今では県外から調達しています。また、しっかりとマニュアルを作られたり、若い人の意見を盛り込んだりと、様々な工夫を重ねて現在の祭りに受け継がれています。
守るべきものは守り、変わるべき所は変わる、まさにこういうことが三輪神社のドジョウ祭りでは体現されています。